ニュースソース:The Financial Express
June 21, 2010
40億ドル規模にもなるインドのバイオテクノロジー(生物工学)産業は、かつて新興産業としての名声を保つことに大きく失敗した。そして今、目の前にある試練に立ち向かおうと目覚めたところである。インドのバイオテック企業らは、これまでの決まりきったやり方から脱しようと試みており、多角的な戦略を打ち出した。これによってこの産業における人的資源の質を上げ、投資を増やし、企業家たちを活気づけたい考えだ。
インドバイオテクノロジー企業連盟(ABLE)は、他の詳細記事と共に、投資ニーズについての概要を「Vision Paper」にまとめ、現在編集中だ。また、様々な講座や検定プログラムを牽引するようにと、熱心で信念の固い人々を集めた。これらの講座やプログラムは大学で生物工学技術を学ぶ学生の質を向上させるためで、さらに平行して、企業家たちを集め、この産業でビジネスを操業する技術についても指導している。
投資家たちによると、このバイオテック産業は長い間、高い成長率をもたらすだろうとされ、上手く発展すると期待されてもいたが、典型的にも企業家精神やリーダーシップが欠けていたこと、またビジネスモデルが透明性に欠けていたことで、投資家たちを魅了し損ねた。
その一方で臨床研究、診断・医療用機器、医療サービスや医療認定ファンドといった分野の産業が台頭した。
「研究分野に将来有望な候補者の数が欠乏していたことや実現不可能なビジネスモデルのせいで、バイオテック開発研究への投資は限られていました。それに、インドにおけるバイオテック企業らのほとんどがバイオシミラー(ジェネリック)か、もしくは診断用機器の開発に集中して取り組み始めて以後、ベンチャーキャピタル(VCs)や非公開株式投資家(PE)らは長い目で見た場合のこの産業に、技術革新の可能性を見出せなかったのです」
と、ディプタ・チャウダリー氏は話す。氏はフロスト&サリバン社の南アジア・中東支部で製薬・バイオテック研究のプログラム・マネジャーをしている。
バイオテック産業界はしかし、自分たちと投資家たちの間にコミュニケーションのずれがあり、一部のPEやVCの理解を得られていない、と感じているようだ。
「PEらは通常、科学についての深い理解に欠けており、このこと故に、長い準備期間を待つのが難しいと考えてしまうのです。相互間に必要なコミュニケーションが明らかに欠如しています」
ヴィルー・モラワラ・パテル氏はこのように話す。
「企業の評価には、その将来における成長計画と同じように、現在におけるその可能性も大変大きく関係します。このことについてさらに理解を深め、そして成長ポイントを確認するためにこの産業分野を実地調査することは、実行可能なビジネス計画に取り組んでいるバイオテック企業の可能性を大いに刺激するでしょう。企業の取り組んでいるこれらのビジネス計画こそが、ひいては投資を得るための助けとなるのです」
と、ディプタ・チャウダリー氏は話す。
vision paperの詳細についてはまだ明らかでないが、ABLEの代表者ヴィジャイ・チャンドル氏によると、冊子は、他の事柄をも交えて、この分野への投資の必要性について概要を述べるものだそうだ。
「バイオテック産業は概して、その成長の勢いを維持するため年間10億ドルを必要としています。vision paperは7月中旬に発行を予定しており、この号で、この分野への投資の必要について概要を発表することになります。その後さらに刊を重ねる予定です」
とチャンドル氏。
産業に詳しい識者らは、この分野が投資家たちを引きつけるため、その機会を広げようとしていると感じているようだ。投資家と企業がともに参加できるよう催される、様々なサミットやフォーラムを通して懸命に努力している、と。
「つい先日バンガロールで閉幕したバイオテック・サミット「Orbi-Med」では、とある大規模な国際ヘルスケア・ファンドが、この分野への投資に非常に大きな関心を示したのです」
とチャウンダリー氏。
企業家精神やリーダーシップの欠如も、これまでずっとバイオテック産業にとっての弱点だった。これらの問題は、特にバイオ燃料といったような新興分野の台頭がある中、自身の産業を実現化させるにおいて、新たな障害となり得る。
「バイオ燃料といった分野にとっては資金は調達可能であるし、非公開株式投資家は投資を考えているようです。しかし、企業的な関心は十分ではありません。バイオテック産業は、科学についての深い理解を要求しますし、これはビジネス投機のように簡単に手を出せるようなものではないのです」
とチャンドル氏。氏は、ストランド・ライフ・サイエンス社のCEOでもある。
バイオテック産業のフォーラムであるABLEは、Biotechnology Entrepreneurship Student Team(BEST)を運営している。活動を始めるにあたり、BESTは、革新的なアイディアを募集し、その応募者の中からもっとも優れた人材を選出。その人たちを、世界中から集められたこの分野のエキスパートによってトレーニングする。
「今年は400件の応募があり、私たちはその中から20件を選ぶ予定です。彼ら20チームはバイオテック業界の大物らや敏腕トレイナーから訓練を受け、バイオテック・ビジネス操業や投資家たちを魅了させる方法、ビジネス・プランを構築する方法などを学びます」
と、チャンドル氏。
人的資源や人材の面でも同じように、バイオテック産業は長い間の停滞期間にある、と彼らは自覚している。訓練された科学者の人材供給が不十分なのだ。この産業は今後5年間で100億ドル規模にしようと計画しており、世界的にみてもインドのバイオテック分野は、その規模の大きさでは3位以内に数えられる。しかしながら、技術革新や価値の面からいうとトップ・プレイヤーには遠く及ばない。革新的な基盤を持つ分野になるにあたって、能力のある科学者の不足が大きな障壁になっている。学校へ通うすべての子どもたちが生物工学の技術について勉強するよう勧められる一方で、科学への深い理解力は欠如しており、質の低いバイオテック(教育)機関が雨後の竹の子のように増えた。これらがこの産業へ多大な影響を及ぼしているのだ。
「バイオテック分野の人材についての主な課題は、とにかくそれが欠けているということですね。我々が直面している大きなパラドックスは、資格ある候補者に不足はないのに、雇用条件にかなう者は非常に希少だということです。たいていの教育機関から輩出される候補者は(就職後)直ちに実地的な責任を負えるよう準備されてはおらず、構造化分析のためのソフト・リサーチ・スキルや実地訓練を求めていることがわかりました」
キラン・マズムダール・シャウ氏率いるカルナタカ・ビジョン・グループは、ABLEと共に「finishing school:仕上げ教育」というコンセプトを打ち出して、果敢にこの問題に挑戦しようとしている。
「大学で生物工学を学んだ学生たちが雇用条件にかなう能力を増やすため、また、彼らがプロフェッショナルとなるため真剣に努力できることを明確にするため、我々は「finishing school:仕上げ教育」という構想を導入しました。これは大学が学生たちに1年間のコースを提供するもので、ハイレベルな技術スキルを教え、学生たちを(業界)即戦力にする、というものです」
と、マズムダール・シャウ氏。
「この国への投資が増大していることからも明らかなように、インドは世界的規模の製薬業界で魅力的な市場だと見られています。地球温暖化、エネルギーや健康・食料の安全保障といった新たな課題はバイオテック産業にとって大きなチャンスを与えてくれるものなのです」
マズムダール・シャウ氏はこのように話した。
まず州内10カ所の教育機関で試験的な計画として始められ、今後他の州でも順次行っていく予定だ、とチャンドル氏は話している。
「業界が求めるものと大学側が輩出するもののギャップは、主に双方が協力し合うことで解決できるでしょう。我々はこの取り組みを目下進行中です」
ABLEはさらに、とある検定プログラムも実行計画中だ。バイオテクノロジーを学ぶ学生たちを試験し、レベルに応じて等級を与えるもので、ABLEの代表は、
「我々(ABLE)は、デリーに本拠地を置く査定会社アスピリング・マインド社と提携し、候補者たちの能力を即座に判定するためのこういった検定プログラムを導入できればと考えています」
と話している。
先を見越しての行動としてインドが取るべきさらなる一歩は、国内で最高レベルの学校を卒業し、西欧諸国に流出してしまった幾ばくかの質の高い人材を呼び戻すことだろう。
「インドが、まさに革新と発見の段階のスタート地点にいる今、多くの才能や経験(者)を呼び戻すことは絶対必要条件になるでしょう。景気後退の後、多くの科学者たちが解雇の憂き目にあい、その中のいくらかはインド出身者でした。今こそ、こうした科学者たちをインドへ呼び戻すチャンスです」
と、チャンドル氏。
中国は他の国々へ出てしまった才能ある人々をもう一度本国へ呼び戻すため、「Uターン」プロジェクトを組んで彼らを引きつけようとしている。
インドのバイオテック産業としても、中国と肩を並べるべく、同じ方法でうまくやるだろう。
Translator:Kae INOUE